今回は、損失隠しで大きな問題となったオリンパス株式会社を分析してみました。
光学機器大手の同社は、1990年代に多額の有価証券投資を行い、バブル崩壊の影響で多額の含み損を抱え、その後、含み損が1000億円近くまで膨らみましたが、損失の計上を先送りしていました。
2006~08年には、健康食品販売会社や資源リサイクル会社など国内の非上場会社3社や英医療機器メーカー「ジャイラス」を次々と買収。3社の買収資金約734億円や、ジャ社の買収を仲介した米投資助言会社「Axes(アクシーズ)」などに支払った報酬約660億円の一部を含み損の解消に充てていたようです。
企業力総合評価も不安定かつ悪化トレンドとはいえ、青信号領域です。営業効率以下の下位親指標も、安全性が赤信号領域に嵌っていますが、他の指標はギリギリといえども青信号領域です。
ここで少し視点を変えて、オリンパスをチェックしてみましょう。
少し意地悪ですが、各社の商品の儲けの元である売上高総利益率の順番に企業力総合評価を並べてみました。4社の中で一番利益率が低いシマノですが、36.26%という数字はかなり良い数字です。(2011年のトヨタ自動車で12.52%)
オリンパスの企業力総合評価は、儲かる製品を作ることが出来る日本有数の会社にしては、「その儲けどうしたの?」と問いたくなるような結果です。
営業効率(儲かるか)、流動性(短期資金繰)、安全性(長期資金繰)の各指標を比べてみました。
先の企業力総合評価とあわせて4指標のストーリーを説明しましょう。
「良い製品を製造して売るので、利益率が高く営業効率は天井値を付ける。
儲かってお金がいっぱい入ってくるので、流動性は天井値になる。
儲かり、税引後利益が沢山積みあがって純資産が増えるので安全性が天井値を付ける。
営業効率、流動性、安全性が高いので企業力総合評価が高い。」
となり、オリンパス以外の3社はストーリーどおりの説明で矛盾がありません。
オリンパスは、どこかでストーリーが分断される様な事象を起こしたということです。
素晴らしい製品を作ることが出来る会社であるが故に、残念です。
まとめ
事件は発覚したばかりで、詳細は捜査結果を待つより仕方がありません。
粉飾決算の可能性があっても、儲ける力の充分ある会社は、損失カバー力も甚大で、切羽詰まった分析結果にはなりません。
しかし、他社比較をすることによって、何かがおかしい・・・の一歩は踏み出せます。
SPLENDID21NEWS第72号【2011年11月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。
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